在宅事業

背景・趣旨

我が国では、類を見ないほど急速に高齢の糖尿病患者さんが増加してきています。この背景として、高齢者の人口そのものが増加していることに加え、加齢とともに耐糖能が悪化しやすいことが挙げられます。高齢糖尿病患者数が今後さらに増加することが予測されるため在宅で治療を受ける方も増加することが予想されていますが、自己注射を必要とする患者さんへの対応、食事摂取ができなくなるなど体調が悪い(シックデイ)時の対応など、在宅の現場における糖尿病患者さんへの対策は現時点で多くの課題を有しています。多くの人々が住み慣れた環境や地域において安心して自分らしい生活を実現できるよう、医療や介護に関わる私たちが連携してサポートしてゆく必要があると考えています。

これまでの取り組み

地域において医療側と介護側の顔の見える関係づくりと相互理解が重要と考え、当法人では介護の現場で活躍する介護支援専門員(ケアマネジャー)や訪問介護員(ヘルパー)の方々への啓発活動として、糖尿病という病気と糖尿病患者さんのケアに関する講習会を、双方が参加して継続して開催してきました。その過程で、医療や介護の現場で必要となる知識や理解に関して、医療側と介護側の双方で不十分であることがわかってきました。

そこで、2020年「糖尿病在宅患者の療養・介護支援ガイド〜糖尿病を持つ人が在宅で健やかに暮らすために〜」を多くの会員の方の協力を得て発刊し、HPや実際の配布を通じて普及を図って参りました。このガイドの中では、特に医療保険と介護保険の具体的な活用方法や提供できる医療・介護サービスに関する相互理解を深める内容を盛り込んでいます。医療側のできる事・介護側のできる事を医師・歯科医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・運動療法士・作業療法士・介護専門員・訪問介護員といった医療・介護に携わる職種の方々に執筆いただき、それぞれの立場でできる事をまとめることで、一人の糖尿病患者さんを在宅で支える際に地域での連携による解決策を見出す手助けとなることを期待しています。

糖尿病在宅患者の療養・介護支援ガイド

現在・今後の展開

これらの活動を通じて、在宅や入居施設内で糖尿病をもつ方々を包括的に支えていくことが重要と考え、実際に関わるすべての方々への普及啓発を目的に、これまでの組織を統合し当法人内に「在宅委員会」を設立しました。

前述のとおり、医療と介護の相互理解を実際に深めていくためには、それぞれの地域ごとの特性にあったそれぞれの関係をまず構築していくことが重要と考えます。  そこで、在宅委員会では、多摩地域の中で医療と介護の連携を自治体ベースで進めていくことを目指しています。最初の取り組みとして、八王子市、東村山市において、各地域で医療・介護を支える人々が参加できる勉強会・講習会を2022年より開始しています。それぞれの会では、事前・事後のアンケートを実施することで、特に介護に携わる方々から、糖尿病に関する理解やニーズを探り、これらをもとに他の地域における普及啓発活動を目指していくプランです。

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