ブックタイトル会報2023年11月
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会報2023年11月
第245号令和5年11月発行Page 5第11回日本くすりと糖尿病学会学術集会令和5年9月2日(土)~3日(日)神戸学院大学[当法人会員]武蔵野赤十字病院日髙千恵[薬剤師]第11回日本くすりと糖尿病学会学術集会が、9月2日(土)・3日(日)にハイブリッド開催された。会場は神戸学院大学(ポートアイランドキャンパス)で、オンデマンド配信は9月15日~9月30日であった。本学会は、基礎と臨床を学べる貴重な学会であると思う。学会員の8割が参加申し込みをしていたとのことであり、糖尿病に携わっている薬剤師にとって特に主要な学会であると言えると思われる。コロナ禍で学会や研修会、各種勉強会が制限されている間にも次々と糖尿病薬が発売された。その中で、私にとって特にインパクトがあったのが世界初経口GLP-1受容体作動薬セマグルチド(リベルサスR)である。服用方法の注意点は1日のうち最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水で服用、服用時及び服用後30分は飲食、他の薬剤の経口摂取を避けることなどであり、他の内服薬に比べて、一手間かかる。経口製剤は皮下注製剤に近い血中濃度を得られるが、その個人差は大きいと言われている。大会長である武田先生の講演の中で解説があったので、抜粋してお伝えしようと思う。経口セマグルチドは胃で吸収されるが、サルカプロザートナトリウム(SNAC)が添加されている。SNACは胃内pH上昇作用によりペプシンを阻害し、また胃の脂質膜流動化を図り、セマグルチドの吸収を促進している。SNACは常水ではよく溶けるが胃液には溶けない。そこで、重要なのが服用時の飲水量である。飲水量によって胃内のpHが左右され、飲水50mLではpH2未満でSNACが溶解できず、200mLでは一過性にpH5以上になり溶解できる。日本人が1錠を服用するときの飲水量の実測値は60~69mLが多く、この量でセマグルチドを服用すると溶解できず吸収されない。また、飲料水のpHにも影響する。経口補水液やジュースはpH3~4の間にあることが多く、pH7である水でないと吸収が下がってしまう。セマグルチドの効きが悪い場合、とても少ない飲水量で服用していないか、本当に水で服用しているか、夜食を食べていないか、一手間かかる理由などを患者さんにお話してみると、何かの糸口になるかもしれない。また、PPIや制酸剤との併用でセマグルチドの吸収作用が高まる可能性も示唆されており、今後の臨床でのエビデンスに期待が寄せられているとのことであった。読んで単位を獲得しよう答え2,3下記の解説をよく読みましょう。(問題は1ページにあります。)解説糖尿病治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱から成る。55歳男性初発の糖尿病で、肥満(BMI29.7kg/m2)を伴い、空腹時血中Cペプチド4.5ng/mlと高値であることから、メタボリックシンドロームを背景にした2型糖尿病と考えられる。HbA1c<9.0%であり、尿ケトン(-)であることから緊急性は乏しく、まずは食事運動療法を開始する(2:〇、4:×)。食事運動療法で3か月以上改善がみとめられないようなら、ビグアナイド薬などインスリン分泌非促進系薬を検討する(3:〇)。食品交換票の表3はタンパク質を多く含む食品であり、1600Kcalで1日5単位程度の摂取である(1:×)。生理食塩水の点滴はケトアシドーシスなどで行う(5:×)。臨床糖尿病支援ネットワーク