ブックタイトル会報2022年9月

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会報2022年9月

第231号令和4年9月発行Page 1“mano a mano”とはスペイン語で“手から手へ”という意味です糖尿病診療のTargetはHbA1c?肥満症診療のTargetはBMI?なのか[当法人理事]東京都立多摩総合医療センター辻野元祥[医師]7月に入り、COVID-19陽性者数が激増し、皆様方におかれましても殺伐とした毎日をお過しとお察しいたします。ワクチン普及の効果か、集団免疫の効果か、第5波、6波、そして7波に至り、重症者の割合が格段と減ってきているのは紛れもない事実です。ただ今回は余りに感染者母数が多く、そのため多くの医療者やその家族が陽性者となるのに伴って、多くの医療機関で休業者が増加していることがリソース上の課題となっています。前置きが長くなりました。今回はいったんコロナから離れ、この数年、私の抱いている、“糖尿病治療の真のTargetはHbA1cなのか?、さらに肥満症治療の真のTargetはBMIなのか?”について、私見を述べさせていただきます。糖尿病診療で、HbA1cが8?9%を超える状態を許容するか、については論じるまでもなく、少なくとも8%未満を達成し、維持することが求められると思います。ただ、その先、HbA1cがどこまでパラレルに健康寿命の延伸に相関するかというと甚だ疑問を感じています。切り口としてのHbA1cを活用し、ある程度その封じ込めを図りつつも、真の勝負は、血圧、脂質、活動度、そして最も難しい患者満足度をいかに高めるか、にかかっているような気がしています。HbA1cを糖尿病診療の価値観の中心付近(?)におきつつ、絶対視しないことは、患者さんの年齢が上がれば上がるほど、ますます大切になってきます。肥満症についてはいかがでしょうか。BMIが30を超えると心血管事故、がんのリスクが高まることは論じるまでもなく、難易度の高いBMI32.5以上の肥満症に、減量・代謝改善手術という選択肢が明確に示されているのは重要なことです。BMI30未満でも、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬がめざましい成果をあげていることは福音です。ただ、ここでも、ありとあらゆる治療をおこなって、BMI30を切ってきた患者さんの、同じく真の勝負は、血圧、脂質、活動度、患者満足度の向上にかかっているように思うのです。ある程度まで下げたら、BMI、体重を絶対視しない、突き詰めない(?)肥満症診療もあるのではないかと考えています。おっとっと、勘違いなさらないでいただきたいのは、最初からHbA1cやBMIに拘らない、ということでは決してないことです。それでも、すべてではないのだ、という医療者のこころの余裕が、Diabetes Stigma、Obesity Stigmaへのささやかな解決の一助になりはしないかと愚考する今日この頃です。読んで単位を獲得しよう西東京糖尿病療養指導士(LCDE)は、更新のために5年間において50単位を取得する必要があります。本法人会員は、会報「MANOaMANO」の本問題及び解答を読解された事を自己研修と見做し、1年につき2単位(5年間で10単位)を獲得できます。毎月、自分の知識を見直し、日々の療養指導にお役立てください。(「問題」は、過去のLCDE認定試験に出題されたものより選出、一部改変しております。)問題●次の文章を読んで以下の質問に答えてください。59歳、女性、主婦。15年前に2型糖尿病と診断。体重65kg→55kgまで減量し、HbA1c 6.5%未満でコントロールされていた。3年前に要介護3の義母と同居し主介護者として世話をするようになってから、体重が元に戻りHbA1cも8.1%まで上昇したため教育目的で入院となった。降圧薬、脂質異常症治療薬を服用している。【身体所見】身長150cm、体重65kg、血圧138/106mmHg、脈拍88/分【合併症】神経障害なし、網膜症なし【検査所見】空腹時血糖値176mg/dL, HbA1c 8.1%, LDL-C 99mg/dL, HDL-C 89mg/dL, TG 176mg/dL, eGFR54mL/分/1.73 m 2 ,尿糖(+),尿アルブミン25mg/gCrこの患者に適した食事療法の指示として正しいのはどれか、2つ選べ。1.目標体重は50kgである2.エネルギー係数は35(kcal/kg目標体重)以上に設定する3.炭水化物の割合は総エネルギー摂取量の30?40%にする4.たんぱく質を0.8g/kg目標体重に制限する5.食塩摂取量は6g/日未満とする臨床糖尿病支援ネットワーク