ブックタイトル武居先生特別号

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概要

武居先生特別号

Page 2特別号令和4年8月発行父の思い出足利赤十字病院外科武居友子この度は、父、武居正郎の急逝に際しまして、臨床糖尿病支援ネットワークの皆様には、多数の患者様の受け入れをいただき、誠にありがとうございました。かかりつけの糖尿病患者様は、無事に専門の先生に引き継ぐことができました。また、「MANO a MANO」特別号を発行いただけるとのことで、大変光栄に存じます。寄稿のご依頼をいただきましたので、稚拙な文章ではございますが、父の思い出を書かせていただきます。父は仕事一筋で、休日も不在、夏休みは1型糖尿病患者のキャンプを開催しておりましたので、子供のころの父の思い出はあまりありません。怒られたことはなく、私が医師になったことは非常に喜んでくれました。この数年、私が登山を趣味にするようになると、学生時代にワンダーフォーゲル部に所属していた父も一緒に行くようになり、最後に親孝行できたと考えております。2022年の正月に高尾山へ登った際には、ずいぶんと時間がかかり、父の体力の衰えを感じていたところでした。2015年に心筋梗塞を発症して以降は慢性心不全を合併しており、2022年1月に特発性血小板減少性紫斑病に対してステロイドの内服を開始した影響もあり、心不全が増悪したようです。3月18日の診察中に心室細動を起こしましたが、診療所のスタッフの速やかな除細動と蘇生処置により、4月5日に後遺症なく退院となりました。診療所の再開に向けて準備をしておりましたが、4月16日に再び心室細動を起こし、同日、77歳にて永眠いたしました。初回入院時に、糖尿病を含めた特殊外来の患者様にはすぐに連絡し、1カ月分の処方と紹介状をお渡しいたしました。東邦大学や武蔵野赤十字病院に勤務していた時から、40年以上にわたりかかりつけという患者様も多く、家族以上に心配していただきました。父から医師の心得のようなものを直接聞くことはありませんでしたが、患者様の様子から、父の臨床医としての在り方を改めて実感いたしました。また、本年4月小児科学会で2演題発表予定であったことに驚くとともに、臨床医である限り常に新しい知識を学び、努力を怠らない姿勢は、見習わなければならないと身の引き締まる思いでおります。残念ながら武居小児科医院は閉院とさせていただきます。幸いにも、同じ場所で小児科の開業を予定してくださる先生が見つかり、小児科という形では残すことが出来そうです。最後にはなりましたが、皆様の生前のご厚意に感謝いたしますとともに、皆様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。武居正郎先生を偲んで武蔵野赤十字病院内分泌代謝科杉山徹武居先生とお会いするようになったのは2013年に私が武蔵野赤十字病院に赴任してからです。武居先生は元々当院の小児科部長をお務めでしたが、私が当院に赴任した時は既に武居小児科医院の院長先生でした。小児科でありながら大人の1型糖尿病患者さんもたくさん診ておられ、武居先生の患者さんが妊娠され当院で出産される際には周産期の血糖管理を我々に任せていただきました。武居先生からご意見いただき、1型糖尿病患者さんの周産期血糖管理の質の向上や心のケアを目指して、当院産婦人科医師と合同で講演会・勉強会を開催したりもしました。当院で武居先生の患者さんの周産期管理をしたことをきっかけに開催するようになった産婦人科と内分泌代謝科合同の周産期糖尿病カンファは現在も月に1回開催し続けています。また、武居先生が患者さん向けに発行されていた「まだなまえはない」を私にも毎号送っていただき、内容はもちろんのこと、患者さんへ思いやメッセージを発信し続けられていたことに感銘を受けました。糖尿病関連の数々の研究会でもよくご一緒させていただき、武居先生ご自身のご講演も拝聴しましたし、別の先生の講演で武居先生が鋭い質問をされるのもよく目の当たりにしました。(私の講演で武居先生にご質問いただいたこともあります。)2022年3月に武居先生が診療中に倒れられ、当院に救急搬送されました。武居先生自身がおっしゃったように文字通り三途の川を9割方渡っていた状態から復活され、ICUからちょうど出てこられた時にお会いしました。車椅子に乗って照れ臭そうながら笑顔でお話しいただきましたが、一般病床に移られてからさらに回復され、4月に元気なご様子で退院されました。とある糖尿病の研究会の世話人会が4月15日の夜にオンラインで開催され、武居先生も出席され、入院された時のお話しや今後のご予定などをお話しくださいました。ご逝去されたのは、そのすぐ翌朝のことでした。信じられない気持ちも大きかったですが、その時の状況をお聞きして納得もしました。お別れ会に参加させていただき、多くの患者さんやそのご家族や医療関係の方々が涙とともにお別れされているのを拝見し、多くの方に尊敬され、愛された先生だったのだと改めて感じました。個人的には、1型糖尿病という疾患に対する考え方、患者さんに対する姿勢など、多くを学ばせていただいたと思います。最後になりますが、武居先生に大変感謝するとともに、ご冥福を心よりお祈り致します。臨床糖尿病支援ネットワーク