ブックタイトル会報2022年6月

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会報2022年6月

第228号令和4年6月発行Page 3第56回糖尿病学の進歩令和4年2月25日(金)~26日(土)Web開催[当法人会員]多摩センタークリニックみらい長谷川亮[医師]「糖尿病学の進歩」は、1998年に医師となった私が当時初めて参加した学会です。研修医時代を立川相互病院で過ごした折、内分泌代謝科病棟で研修中に会期があり、全員参加という指導医の言により慌てて病棟を後にした事を思い出します。今回の「第56回糖尿病学の進歩」は四国で開催を予定され現地出張を願っていましたが、昨今のコロナ禍により残念ながらWeb開催となりました。それでも、興味深く拝聴させていただいた話題をここにご報告させていただきます。腎臓内科医の視点で、最も気になるのは言うまでもなく糖尿病性腎症の治療の進歩についてです。本来、治療(この場合は根治)とはその病因を排除し治癒に至る事であり、癌の場合は病巣の除去や癌組織の死滅を意味します。腎臓病においても、例えば腎炎の治療だと、何らかの原因により生じた腎の組織学的変化に対し、その原因の除去と炎症が改善に至る事となります。ところが糖尿病性腎症は、高血糖など長期間の暴露による不可逆的組織変性が病因で、根治が困難な病態です。つまり現在の糖尿病性腎症治療の到達点は末期までの病期進行を遅らせる事となり、この治療における薬の役割は、いかに悪化防止に寄与するか、となりますが、根治ではないため、万能とは言わないという点が重要です。この意味と役割を最も端的に解説していただけた演題が、東京女子医大・馬場園先生の「糖尿病性腎症の病態と治療」でした。この講演の中で、心不全治療におけるFantastic-4と並べて腎症治療におけるFantastic-4を掲げておられました。糖尿病治療薬ではSGLT2阻害薬、GLP1受容体作動薬の2剤がこの中に含まれ、腎症増悪因子の多くをコントロールし得る治療薬の進歩といえるでしょう。他にも高血圧治療や食事療法といった腎症と直接銘打っていない演題の中でも端々に、腎症を意識した内容が多く聞かれました。ただ残念なのは、次々と出る薬剤の大規模研究結果に圧されて、糖尿病治療の基本である食事療法や運動療法に関する演題の影が薄れてしまったこと。どの薬剤の添付文書にも食事運動療法を行った上で、と書かれているにも拘わらず、です。食事療法が基本とされる最大の理由、特に悪化防止に関わる最重要ポイントは減塩と過剰摂取の抑制。塩分過剰摂取の前では、講演中にあったARNIやMRAなど優れた新薬も十分効果を発揮できず、SGLT2阻害薬も薬効を超える過剰摂取には太刀打ちできません。少し前ですがある病院の外来で、食事療法や運動療法は時代遅れと笑う声を、大学派遣の非常勤医が話しているのを耳にしました。栄養や療養の相談は確かに手間や労力は膨大で一見薬の方が合理的に見えるのかもしれませんが、糖尿病治療や療養に関わる皆さま方の協力なくして腎症の治療はあり得ません。今回の学会研修を活かし必要な薬剤を使いながら、皆さま方とともに基本を忘れず食事や運動の指導を続けていきたいと思います。読んで単位を獲得しよう答え3下記の解説をよく読みましょう。(問題は1ページにあります。)解説1:×妊娠時には糖尿病網膜症が出現したり、進行したりする可能性があるので、早期の眼底検査が必要となる。2:×妊娠中のインスリン需要量は増加する。1型糖尿病合併妊婦では非妊娠時の約1.5倍となる。3:○児の奇形は高血糖が主な原因であり、妊娠8週(受胎後7週)までに奇形の有無は決定される。4:×以前は保険上【禁忌・禁止】とされていた時期もあったが、現在は保険適用である。5:×鉄欠乏性貧血の回復期には、HbA1cは低下する。臨床糖尿病支援ネットワーク