ブックタイトル会報2022年5月

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概要

会報2022年5月

第227号令和4年5月発行Page 7第56回糖尿病学の進歩令和4年2月25日(金)~26日(日)Web開催[当法人理事]東京医科大学八王子医療センター天川淑宏[理学療法士]第56回糖尿病学の進歩を、2022年2月25日(金)、26日(土)の2日間、愛媛県松山市での現地開催を予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を考慮し全面的にオンライン形式での開催となりました。糖尿病学の進歩のテーマは、“未来への架け橋”。特別企画は、“Immunometabolism研究の進歩”、“AIと統計の臨床・研究への応用”、“ライフステージからみた糖尿病”、“糖尿病のprecision medicineを目指して”。シンポジウムは、“糖尿病における喫緊の課題”、“1型糖尿病と免疫のトピックス”、“糖尿病治療・血糖管理の進歩”、“大規模臨床研究からのエビデンス”、“糖尿病集約的治療update”、“肥満・インスリン抵抗性の分子機構”、“2型糖尿病の薬物療法update”、“糖尿病療養指導のさらなる発展を目指して”。教育講演は、72のタイトルで開催されました。シンポジウム8「糖尿病療養指導のさらなる発展を目指して」では、“CDEの現状と課題、将来の期待をさまざまな立場から論ずる”をテーマに、東京慈恵会医科大学名誉教授の宇都宮一典先生、千葉大学大学院看護学研究院教授の正木治恵先生を座長に迎え、「糖尿病療養指導士のあゆみと今後の展望」を横浜市立大学大学院教授寺内康夫先生、「チーム医療の発展と糖尿病協会の取り組み」を岐阜大学大学院教授矢部大介先生、糖尿病療養指導士の活動拡大へ向けた取り組み?地域全体で糖尿病患者を支える?」を佐賀大学医学部附属病院看護部永渕美樹先生、「糖尿病病態栄養専門栄養士としての当院での取り組みと今後の展望」を国家公務員共済組合連合会虎の門病院栄養部科長山本恭子先生、「運動療法のニューノーマルそれは「ちゃんと指導」「ちゃんと実践」を東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科天川淑宏で行いました。シンポジウムで私は「糖尿病における運動療法の重要性」とし、糖尿病による高血糖状態は筋膜の糖化で関節の可動域が狭まるなど運動器に悪影響を与える。運動療法を始める際には、運動器の状態をしっかりと確認し、動きやすい体にすることがまず重要である。そして、慢性的な運動不足は筋肉に糖を取り組みにくくし、筋肉への糖輸送担体であるGLUT4の減少が一因、インスリンが働いたとしても取り込みにくくなってしまう。現状、薬物療法では糖、インスリン、GLUT4バランスを整えることはできないため、運動療法による改善が重要である。運動療法の基本は、体力の維持・向上のために意図的に行う「運動」と、日常生活上での家事、労働、通勤などの「生活活動」を合わせた「身体活動」が基本。そして、現在の身体活動状況を把握し、運動療法への関心や志向、意欲に合わせ、目的と目標を設定することが大切。運動には、糖を活用しやすい筋肉にする「ストレッチング」、糖を活用する場所である筋肉づくりを促す「レジスタンス運動」、骨格筋の糖代謝を改善する「有酸素運動」。ストレッチングは補助的に考えられがちですが、ストレッチングには、非インスリンシグナルとして骨格筋の糖代謝を促進する効果があるほか、筋肉や関節の柔軟性を向上し、疲労回復やリラックス効果によるストレス軽減効果もある。また、柔軟性が著しく低下した筋肉には、筋膜を解きほぐす「筋膜リリース」と併せて行うことが動きやすい体づくりに効果的である。レジスタンス運動は、一部の部位だけでなく全体的に行うこと、少しずつ負荷を高め、反復して継続的に行うこと。最も重要なことは、どの部分を鍛えているか意識して行うこと。有酸素運動は、GLUT4の産生を促する。ウォーキングの場合、1万歩を目指してたっぷり歩くより、20分程度を目標にしっかり歩くことがGLUT4の増殖効果が高い。なおコロナ禍で家でもできる有酸素運動として、2~3mを60~80歩小刻み「スローステップジョグ」を映像で紹介。これらの運動を、治療方針および患者さんの嗜好に合わせて無理なく安全な運動療法プログラムをつくるためには、Type(種類)、Intensity(強度)、Frequency(頻度)、Time(時間)の頭文字をとった「TIFT」に沿って考えることが大切。このように運動療法は単に新しいものを示すのではなく、これまで積み重ねてきたことをしっかりと示すことが運動療法の「ニューノーマル」ではないか。コロナ禍、運動療法のニューノーマルとして考案したのが『あなたのための運動療法見える化動画』。処方薬と同じように患者1人ひとりに必要な運動療法を動画で作成し提供。最後に運動療法を生活の中で取り組んでもらうために大切なこと、患者さんの「動こうと思う心」と「動ける身体」で、それが「質のよい筋肉」をつくり、「良好な血糖コントロール」につながる。「ちゃんと指導」することで、患者さんは自分の体に目を向けて運動を「ちゃんと実践」してくれるようになるそうです。そこから、食事療法も薬物療法もおろそかにできない心が働いてくれるようになり、糖尿病の運動療法の役割はここにあるのではないか、とお伝えしました。読んで単位を獲得しよう答え4,5下記の解説をよく読みましょう。(問題は1ページにあります。)解説本症例は、意識清明だが、著しい高血糖と尿ケトン体強陽性、脱水があり、糖尿病性ケトアシドーシスまたはケトーシスの状態である。速やかに専門医へ紹介し、補液とインスリン治療を開始するのが妥当。搬送が長くなる場合など必要に応じて、紹介元医療機関でも静脈を確保し生理食塩水とインスリンの静脈内投与を開始する。1.×食事療法のみでの改善は見込めず、速やかにインスリン治療を開始しなければ昏睡状態となる危険性もある。2.×著明な高血糖やケトーシス・ケトアシドーシスの状態での運動療法は禁忌。3.×SGLT2阻害薬は重症ケトーシスがある状態では禁忌。4.○5.○臨床糖尿病支援ネットワーク