ブックタイトル植木先生特別号
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植木先生特別号
特別号令和4年3月発行Page 7植木先生から学んだ「心」東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科天川淑宏植木先生は、物事のとらえ方が理論的なのにひけらかさず、医師という立場や肩書にとらわれず、患者さんにも私たちコメディカルにも、同じように接して下さる心優しい先生。そして、発想力に富み、誰も考えつかないアイデアが時にひとりの人生を変えてしまうことも。その変えられたひとりが私です。2001年のある日、突然のかかってきた電話、「植木です、明日から医療センターで運動指導してくれないか」唐突な話。この発想は、日本の医療界ではありえない。糖尿病治療の1つ運動療法に理学療法士が専属で携わることはない、その理由は診療報酬が与えられていないからである。しかし、植木先生は「患者さんにとって、運動は絵に描いた餅のような指導であってはならない、もっぱら動きたくない患者さんが、ただ運動しないさいと口先だけで言われても心も体も動こうとはしない、できないことをしなさいと言われれば・・・・・」。そして、患者にとって「糖尿病の治療は一生のこと、その治療の1つに運動療法が適うことが欠かせない、診療報酬は患者が望む医療であえば与えられる」。「その運動療法を一緒に目指して欲しい」。私は、理学療法士の異端児と言われてもこの医療に掛けようと決意。そして、植木先生のもとで歩んできた軌跡には、患者に向き合う10年間のJDOIT3、運動療法をメディカルスタッフに伝える12年間のスキルアップセミナー、運動の見える化へMETsと歩数の関係など、臨床、セミナー、研究とたった700文字の原稿では言い尽くせない多くのチャレンジがあり、そして、植木先生から学んだことは「万能一心」であること。その教えが私の心に生き続けています。言葉にできないほどの感謝を込めて神奈川県立保健福祉大学実践教育センター和田幹子植木先生が旅立たれて早いもので3か月以上の月日が経過しました。まだ植木先生と連絡がとれないという実感がなく、LINEにも時々メールを送ってしまいます。振り返ると30年余り、冬の初めは次年度の糖尿病学会の演題登録にあたり植木先生に色々とアドバイスをいただいていました。毎年、私は延長期間の〆切時間ギリギリまで粘るのですが、植木先生はその前日にはエントリーを終えていました。期せずして11月28日は演題登録延長〆切日前日、植木先生は演題登録を終えて旅立たれたのかな…と思っています。そしてこの時期は、例年通りなら演題登録と並行して上高地の診療所を閉めに行って、戻られてから私や他の仲間と一緒に忘年会をするという年末を過ごされていました。そして今頃は2月の糖尿病医療学学会の地方会に向けて座長の先生方と打ち合わせなど準備をされている頃で、私も例年はその準備の様子を伺い、色々と学ばせていただくのですが、今年はそのようなやりとりもないままに暦だけは春になろうとしています。糖尿病ケアに関連した年間行事の至るところに植木先生がいらっしゃいます。「植木先生、去年の忘年会が終わっていません。新年会…遅くなってもいいですよ」「学会の抄録を見ていただいていませんが、発表の時は見守ってくださいね」「医療学学会、今年はどんな感じですか?進歩は参加されますか?」「今年の学会も会期中にお誕生日を迎えますね。みんなと一緒にお祝いしましょう」なんて植木先生を傍に感じながら過ごしていくのかな…と思っています。多くの教えをいただきましたことに言葉にできないほどの感謝を込めて。植木先生、どれもこれもあたたかい思い出ばかりです。本当にありがとうございました。臨床糖尿病支援ネットワーク