ブックタイトル植木先生特別号

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概要

植木先生特別号

Page 2特別号令和4年3月発行植木彬夫先生を偲んでかんの内科菅野一男夜遅く国分寺の臨床糖尿病支援ネットワーク事務局で、お互いに疲れた表情を浮かべながら、親しく多くの時間を一緒に過ごした植木先生が居なくなってしまった。昔、大学の研究室で夜中まで苦労しながら実験をし、苦楽を共にした仲間とは、独特の絆に結ばれていると感じているが、同じような深いつながりと尊敬の念の対象の植木先生が、72歳になって、死を考えることが多くなってきた私に、強烈に現実の死を顔面にたたきつけてきた。近藤甲斐夫先生が、様々な思いを意識して話しかけてきたときの表情は、ずっと私の脳の片隅に控えているが、植木先生はそのような言葉を全く残さず、突然消えてしまった。最近、いろんな本で、宇宙の盛衰に係る巨大な時間軸と死についての記載を目にし、耳にして、生の儚さに思いが傾きすぎる気配が濃い中で、植木先生と一緒に過ごした時間を思い出す。リブレが出回り始めたばかりの頃から、植木先生は友人のスタッフと協力してリブレとSMBG各種機器との相関性を調べ、食事内容、食事のとり方での血糖の変化をいち早くデータにまとめて私たちに提示され、それをもとに頻繁に議論を繰り返したが、私にとっては、糖尿病の新しい世界が垣間見えてきた、ドキドキする時間だった。このようなドキドキする機会というのは私くらいの年齢になるとなかなかないのだが、植木先生と一緒にいてそんな時間を味わうことができた。私たちの食事指導の方法が劇的に変化したのも、当然の帰結だった。命あるものも、命なきものもいずれは消えていくということはわかっているのだが、その中でつかの間、生きているという実感をもてる時を植木先生が用意してくれた。ヒトとのつながりが自分を変えてくれるが、植木先生は私を変えてくれた大事な盟友だ。植木彬夫先生を偲んで杏林大学医学部糖尿病・内分泌・代謝内科/近藤医院近藤琢磨植木先生のご逝去に対し、改めてご冥福をお祈り申し上げます。振り返ってみますと、先生に直接お世話になる前から、私の父である故近藤甲斐夫から先生のことをよく伺っていました。臨床糖尿病支援ネットワークの前身である西東京臨床糖尿病研究会の頃から多くの仲間に父がお世話になってきたなかで、どうやら先生と父は、特に「馬が合う」関係だったようです。いろいろなエピソードを父の生前に聞いていたため、私が東京に戻ってきた当初から、ついつい失礼なことを申し上げてしまうぐらい、親しみを込めて何でもお話しさせていただいていました。今思うと、大らかな先生のお人柄の中に亡くなった父の姿をみていたのかもしれません。私自身も多くの研究会、講演会、委員会等でご一緒させていただきました。深い見識を基にした鋭い考察をされる一方で一人一人の患者さんを大切にされる姿勢を貫かれ、医学者として、そして医師として、大変勉強させていただきました。そのような先生との一番の思い出は、「糖尿病在宅患者の療養・介護支援ガイド?糖尿病を持つ人が在宅で健やかに暮らすために?」の作成に一緒に携わったことです。薬剤師の森貴幸先生、小林庸子先生とともに、何度も夜遅くから集まって編集作業を行いました。長い月日がかかった分、ようやく完成、印刷に漕ぎ着けたときの達成感は今でも忘れられません。このような達成感、充実感を今後も共有できるよう、先生のご遺志とともに残されたメンバー皆でしっかり活動して参りたいと考えております。植木先生、本当にありがとうございました。臨床糖尿病支援ネットワーク