ブックタイトル会報2021年7月

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概要

会報2021年7月

Page 2第217号令和3年7月発行第64回日本糖尿病学会年次学術集会令和3年5月20日(木)~22日(土)Web開催[当法人会員]杏林大学医学部付属病院田中利明[医師]コロナ禍の2年目、第64回日本糖尿病学会年次学術集会は6月に富山県で開催される予定でしたが、昨年同様に完全Web開催で行われました。最近は研究会をはじめ学会もWebで行われるので、移動しなくても職場からすぐ参加でき、教育講演や一般演題などはオンデマンドで後からや、繰り返し視聴することができて勉強しやすくなりました。反面、学会がなければ行く機会のない場所を尋ねる事ができなくなったことや、会場で先輩や後輩、お世話になっている先生方に直接ご挨拶などができないことは残念です。学会内容としましては、特に今年は「インスリン発見から100年記念」とのことで、学会でも多くの記念講演等のイベントが行われました。インスリンは1921年フレデリック・バンティングとチャールズ・ベストにより発見されました。1921年は大正10年ですから、100年経ちますが「すごく大昔」という感じはしません(若い方は大昔かも知れません)。また1923年にバンティングは32歳の最年少でノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、同賞の最年少記録は未だ破られておりません。インスリンの発見からその後についても、多くの駆け引きや美談があり、たくさん本になっております。学会の講演でも著明な先生方の苦労話などが聞かれ、今日私達が糖尿病の指導や治療ができるのも、先人達の努力や苦労があるお陰であるだけでなく、今も糖尿病を克服するためにそれぞれの立場から進歩し続けていることを改めて感じました。発表に関しては、COVID-19の発表が多くありました。それぞれの立場からの発表で、コロナ禍の自宅に自粛生活で血糖コントロールが悪くなった人や、外食が減ってむしろ良くなった人などは、自分の臨床経験と照らしても納得いくお話でした。またCOVID-19と血糖管理の関係、患者さんの意識調査など新型コロナウィルスによる影響を多面的に捉えた発表も多く、データ収集の重要さを感じました。当教室からも5名が発表いたしました。臨床発表では「血糖降下剤による腸内細菌叢の変化」、「1型糖尿病合併妊娠におけるインスリン必要量の検討」、「SGLT2阻害薬の使用経験」を、基礎研究発表では「Nrf2のインスリン転写への影響」、「MCP-1とVGEF120分泌に対するアシル化グレリンの影響」の発表です。当院薬剤部小林庸子先生はシンポジウムで「薬物療法からみた個別化の在り方と課題」を発表され、アドヒアランスについて学びました。視聴した講演や発表では、従来の超速効型インスリンより速く効く「超超速効型」インスリンの使用症例や、FGM(FreeStyleリブレ)での血糖トレンド情報ファイル(AGP)だけでなく、TIRやTBRなどの評価や活用その限界など、改めて勉強になりました。またそれらを生かしたインスリンや薬物選択や、栄養指導などへの活用だけでなく、患者自身がカーボカウントを含めて活用できるようチームで支援することの重要性を感じました。また、新しい作用機序の薬、イメグリミンやGIP/GLP-1作動薬の発表より効果を感じ、膵臓・膵島移植や、ヒトES細胞を用いた再生医療の現状などを学び、ヒト膵島研究の重要性と日本での利用制限などハードルの高さを感じました。他には近年聞かれるようになったアドボカシー活動とスティグマの話題もありました。特に「生活習慣病」という言葉自体をなくすべきではというのが印象的でした。内分泌学会ではバーチャル懇親会やご当地プレゼント企画があって楽しめたので、糖尿病学会もそういった「息抜きの企画」があればと思います。6月14日もしくは21日までオンデマンドで視聴できるので、時間がある限り知識のアップデートや新しい知見を得たいと思います。来年はワクチン接種も進み、COVID-19の感染も落ち着き、Webやオンデマンドを残しつつ対面も再開したハイブリッド形式の学会であってほしいと思います。臨床糖尿病支援ネットワーク