ブックタイトル会報2021年1月

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概要

会報2021年1月

Page 2 第211号 令和3年1月発行臨床糖尿病支援ネットワーク今回の特別企画の最後3回目は、糖尿病治療ガイド2020-2021で新設された「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を取り上げます。ここでは31の実例が「診断と初期治療」「定期受診における薬剤調整と指導」「併存症を持つ患者における治療」「特殊な状況における対応」の4つに分けられて、それぞれかなり具体的な対応策が提示されています。ただ誌面の制約上、言及しきれない部分も当然あると思いますし、あまり個人的な日常臨床での対応のコツのようなものは入れにくいのではないかと推測します。そこで本稿では、もう少し踏み込んで「私ならこの症例では、こんな対応をしたい。こんなアドバイスをしたい。」といった日常診療におけるコツ(私案)を記載させて頂きます。やはり誌面の制約上、すべての症例を取り上げることはできませんが、ガイドの文章だけでも十分で特に付け加えることの必要ない症例も多くあります。そこで、日常の外来診療で行っている具体的な対応策を記載してみたいと考えた症例をセレクトして、今回の役目を果たしたいと思います。是非糖尿病治療ガイド2020-2021の113-130頁の各症例提示と対応策を見ながら、御覧ください。<診断と初期治療>症例1本例のような設定の場合には、75gOGTTの結果が境界型で、血糖値のピークが60分、IRIのピークが120分でかなり高値の症例が少なくありません。その場合に、炭水化物をしっかり食べた食後3~5時間に空腹感を覚えることがあり、OGTTで仮に3~4時間までみると、血糖値が60~70台まで下がっていることがあります。したがってOGTTの結果の説明の際には、炭水化物の多い単品メニューは避け、なるべく副食から食べるメリットをIRIの推移から示してあげると実行してもらいやすくなります。症例2介入時にIRI値をチェックし、空腹時採血ならばHOMA-IRを求めてインスリン抵抗性レベルをみておくと、その後の薬物選択の際に役立ちます。仮に食後採血であっても、IRI値がかなり高値にもかかわらず食後血糖値が高ければ、インスリン抵抗性の有無は推測できます。症例3糖尿病の食事療法の方針の見直しにより従来よりもかなり高カロリーになっており、2200kcal・タンパク質85~100g/日を摂取してもらう工夫が必要です。この年齢になるとeGFRは45未満になっていることが多く、尿タンパクレベルのチェックとともにeGFRの推移の観察が重要です。投薬に関してはWeekly DPP-4阻害薬の利用も考慮したいところです。病態やライフステージに基づいた治療の実例[当法人理事]大野 敦 [医師]特別企画「糖尿病治療ガイド」改訂版解説シリーズ③