ブックタイトル会報2020年12月

ページ
2/6

このページは 会報2020年12月 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

会報2020年12月

Page 2 第210号 令和2年12月発行臨床糖尿病支援ネットワーク本稿では、糖尿病治療ガイド2020-2021の6.薬物療法、58-77頁の記載内容に沿って、重要と考えられるポイントに沿って解説いたします。図表については、著作権の点から転載できないため、原本を参照してください。・血糖降下薬については、インスリン分泌非促進系およびインスリン分泌促進系およびインスリン製剤に分けられます(38頁の表6参照)。インスリン分泌非促進系には、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬およびSGLT2阻害薬が含まれます。インスリン分泌促進系には、血糖依存性のものとして、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬が含まれます。血糖依存性とは血糖が高いときのみインスリン分泌を促進し、低いときは促進しない、という意味です。血糖非依存性のものとしてはスルホニル尿素薬および速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)があります。血糖が低い時でもインスリン分泌を促進するため低血糖を生じるリスクがある薬剤ということになります。これらの薬剤を処方する際には患者さんにあらかじめ低血糖の対応をしっかり説明する必要があります。・薬剤の選択に際してはできるだけ低血糖を起こさないように留意します。・薬物治療の変更は、おおよそ3ヶ月ごとに検討します。・妊娠中または妊娠する可能性の高い場合及び授乳中には原則としてインスリン製剤を使用します。1.ビグアナイド薬(インスリン非分泌系)58-59頁・現在、使用されているのは、ほぼメトホルミンのみです。作用機序はひとことでいうとインスリン抵抗性の改善ですが、最近では腸管へのブドウ糖排泄増加も報告されています。安価で心血管イベント抑制効果も明らかなことから、過体重・肥満2型糖尿病では第一選択ですが、非肥満例でも有効です。・乳酸アシドーシスを来さないため、経口摂取ができない状態や全身状態の悪い状態では禁忌です。肝・腎・心・肺機能障害、脱水時、大量飲酒者、手術前後も禁忌です。腎機能については、eGFR 30未満では禁忌です。ヨード造影剤検査時は検査前に中止します。検査後は48時間後以降、腎機能悪化がないことを確認して再開します。・シックデイでは速やかに休薬するよう日頃から指導します。2.チアゾリジン薬(インスリン分泌非促進系)60頁・現在、使用されているのは、ピオグリタゾンのみです。作用機序はインスリン抵抗性の改善で、肥満者への有効性が期待されますが、その一方、体重が増加しやすいので、食事療法の遵守が困難な症例には向きません。・水分やナトリウム貯留をきたすため、浮腫を生じる例、心不全例、心不全の既往のある症例には使用しません。また、女性では、骨折のリスクを上昇させます。以上の理由から、使用頻度はかなり減っています。3.α-グルコシダーゼ阻害薬(インスリン分泌非促進系)60-61頁・現在、3種類が使用されています。多糖類からブドウ糖への分解を阻害し、その吸収を遅らせることにより、食後高血糖を抑制します。したがって、原則、各食直前に服用します。膵に負担をかけない利点がありますが、服薬アドヒアランスの点で、処方される機会は減少する傾向にあります。・後期高齢者や回復手術歴のある症例では腸閉塞の可能性があり、注意する必要があります。薬物治療について[当法人理事]東京都立多摩総合医療センター辻野 元祥 [医師]特別企画「糖尿病治療ガイド」改訂版解説シリーズ②