ブックタイトル会報2020年12月

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会報2020年12月

第210号 令和2年12月発行 Page 1臨床糖尿病支援ネットワーク[当法人評議員]東京都立多摩総合医療センター佐藤 文紀 [医師]当たり前を疑うこと?コロナを離れてコーヒーブレイク?“mano a mano”とはスペイン語で“手から手へ”という意味です読んで単位を獲得しよう西東京糖尿病療養指導士(LCDE)は、更新のために5年間において50単位を取得する必要があります。本法人会員は、会報「MANO a MANO」の本問題及び解答を読解された事を自己研修と見做し、1年につき2単位(5年間で10単位)を獲得できます。毎月、自分の知識を見直し、日々の療養指導にお役立てください。(「問題」は、過去のLCDE認定試験に出題されたものより選出、一部改変しております。)問題 高浸透圧高血糖状態について正しいのはどれか。2つ選べ。 (答えは4ページにあります)1.若年者に多い2.1型糖尿病の初発症状である場合が多い3.脱水が誘因となる4.インスリンの絶対的欠乏により生じる5.動脈血中のpHは通常7.3以上である先日、外来診療の際に、 1型糖尿病をもつAさん(30代女性)からこんなことを言われました。「先生、ブラックコーヒーも血糖が結構上がるんですよ。しかも、ホットよりアイスの方が上がるんです。ネットで調べたらゼロカロリーじゃなかったんです。」糖尿病患者さんに対して、「コーヒーを飲むならブラックで」とよく言っていることもあり、そんなに血糖が上がるのだろうか?と俄には信じられませんでした。しかし、AさんはFGMではなくSMBGで血糖を評価しているので、値は真の値に近いはず(FGMが信頼できないという意味ではありません)。Aさんが事実でないことを言うはずもありません。そこで、外来後に少し調べてみることにしました。まず、メジャーなコーヒーショップのコーヒーの成分を調べてみました(表)。確かに、“ゼロカロリー”ではありません。Aさんは内因性インスリン分泌が枯渇している方なので、少量の糖質で多少は血糖が上がっても不思議ではありません。しかし、コーヒーを一気に飲み干すわけでもなく、目に見えて血糖が上がるとは思えません。そこで、以下の2つの理由を考えました。まず1つはカフェインによる交感神経刺激です1)。カフェイン摂取によりアドレナリンやノルアドレナリンが促進され、血糖が上昇する可能性があります。Aさんが言う「アイスコーヒーでより血糖が上昇しやすい」というのも、交感神経と関連があるのかもしれません。もう1つはカフェインによるコルチゾールの分泌促進です2)。ただし、有意なコルチゾール上昇がなかったとする文献もあり3)、現時点で真偽のほどは定かではありません。これらはあくまでも小生の考察ですので参考程度にしていただけばと思いますが、“ブラックコーヒーは血糖が上がらないだろう”と半ば盲目的に考えていた自分が、“当たり前を疑うことの大切さ”を再認識したエピソードでしたので、ご紹介した次第です。【参考文献】1)Robertson D, et al. N Engl J Med 298:181?6, 1978.2)nna Gavrieli, et al. J of Nutrition 141:703-7, 2011.3)Todd MacKenzie, et al. Metabolism 56:1694-8, 2007.会社商品名/サイズエネルギー(kcal)炭水化物(g)S社ドリップコーヒー(ホット)/T183.3ドリップコーヒー(アイス)/T102.1D社ブレンドコーヒー(ホット)/M71.4アイスコーヒー/M122.2T社本日のコーヒー(ホット)/T132.3アイスコーヒー/T71.5各社ホームページより抜粋