ブックタイトル会報2020年7月

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概要

会報2020年7月

Page 2第205号令和2年7月発行特別企画糖尿病レクチャーシリーズ基礎から学ぶ生活習慣病アプローチ糖尿病の食事療法と栄養指導編[当法人理事]駒沢女子大学/緑風荘病院西村一弘[管理栄養士]栄養教育論においてPOSは極めて合理的な介入方法ですが、食事は非合理的な判断で決定されることが多いものです。例えば、職場の上司や先輩に勧められると嫌でも断れないことや、大好きなスイーツバイキングなどに行けばつい食べ過ぎてしまい、友人との楽しい付き合い酒になると悪いとわかっていても飲み過ぎてしまうことなどは誰でも経験することです。従って、食事療法は人工知能(AI)がはじき出すような、合理的判断を示すだけでは実行することは困難であり、非合理的判断を理解できる人と人との人間的な繋がりが必要になります。食事は非合理的な判断で決定されることは先に示しましたが、食事療法の難しさはそれだけではなく、医療従事者の悲観視下で、毎日3食以上患者自身が献立づくり・買い物・料理などを繰り返し行う治療方法になります。更に日本には四季があり、気候に合った料理もたくさんあります。また、季節ごとに旬の食材があり、出盛り期の違いには栄養価が変化する(春の初鰹と秋の戻り鰹では脂質の含有量が2倍以上になる)こともあります。流行の食材や調理方法もあり、子育て・転勤・介護など生活の変化によっても食生活は度々変化します。少し脱線しますが、残念ながら近年は管理栄養士の中に料理ができない方が増えてしまい、おいしい治療食の調理方法の工夫や調味料・食材の選び方を指導できないということも起こり始めています。これは制度上の問題があり、委託給食が推進されたために、治療食づくりを経験していない管理栄養士が増えてきたということです。養成校を卒業直後に給食を委託会社に外注している病院の栄養科に入職した管理栄養士は、今からでも遅くはないので患者が実践できる美味しい食事療法の指導ができるように自己研鑽をして欲しいと思います。楽観的に見える患者であっても、全ての患者は様々な場面で自分自身の病気と向き合い、迷い苦しみながら日常生活を送っています。また、病歴が長くなり病気の理解が深まれば深まるほど疑問や不安も多くなり、特に食事内容や食生活は血糖値に直結するので、たくさんの疑問や不安を抱いています。そのような患者に問題点を指摘したり、制限や禁止をして宿題を出すことだけが管理栄養士の役割ではなく、常に患者の疑問に答えを出し、不安を解消して、頼りがいがある管理栄養士になることが、患者と管理栄養士の理想的な関係になります。臨床糖尿病支援ネットワーク