ブックタイトル会報2019年11月

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概要

会報2019年11月

第197号 令和元年11月発行 Page 1臨床糖尿病支援ネットワーク“mano a mano”とはスペイン語で“手から手へ”という意味です読んで単位を獲得しよう西東京糖尿病療養指導士(LCDE)は、更新のために5年間において50単位を取得する必要があります。本法人会員は、会報「MANO a MANO」の本問題及び解答を読解された事を自己研修と見做し、1年につき2単位(5年間で10単位)を獲得できます。毎月、自分の知識を見直し、日々の療養指導にお役立てください。(「問題」は、過去のLCDE認定試験に出題されたものより選出、一部改変しております。)問題 血糖自己測定(SMBG)や持続血糖モニター(CGM)について誤っているのはどれか、2つ選べ。1.SMBG機器は患者自身が測定する血糖モニタリングを目的として使用されるものである2.SMBGの意義、手技、活用法について十分な指導が必要である3.SMBG測定時の穿刺器具について複数の患者間で使い回しをしない4.全てのCGM機器はSMBG較正が必要である5.CGMは血中のグルコース濃度を直接・連続的に測定できるシステムである[当法人評議員]吉祥寺・藤田クリニック藤田 進彦 [医師]糖尿病症例の予後改善へ必要なこと2016年日本糖尿病学会は日本における糖尿病患者の死因を新たに報告しました。この報告は、1971年より10年に1回報告されております。今回は2001~2010年の期間で、4回目の報告でした。糖尿病患者の死因の第1位は、がん(38.3%)。第2位は、感染症(17.9%)。そして第3位が血管障害(虚血性心疾患、脳血管障害、腎不全)(14.9%)でした。第1回(1971~1980)、第2回(1981~1990)の報告時には、死因の第1位が血管障害でしたが(第1回:41.5%、第2回:39.3%)、今回は第3位まで低下しました。また、平均寿命も伸び、第1回目報告と比較すると男性は63.1から71.4歳へ8.3歳伸び、女性は64.9から75.1歳10.2歳伸びております。その伸びは一般人(男性:73.4から79.6歳と6.2歳の伸び、女性:78.9から86.3と7.4歳の伸び)と比較しても大きかったのです。このことは、血管障害に対する急性期治療、慢性期治療の進歩とともに、糖尿病治療がよくなったことを裏付けるものでした。糖尿病治療に携わる医療従事者としてはうれしい限りです。しかし、日常の診療で感じることは、糖尿病症例のなかで、合併症(網膜症、腎症)の進行している症例の多くは、糖尿病発症から治療を放置していた症例で、視力低下により眼科受診して糖尿病網膜症を指摘された症例や、下腿浮腫を機に進行した糖尿病性腎症を診断されるような症例です。私が最近経験したのは、数年~十数年前に健康診断を受けて糖尿病を指摘されながら治療を受けていなかった50歳男性です。奥様と小学校1年生の息子さんと3人家族で、常連さんも多い人気の弁当屋を経営しておりました。1年前に右腹痛で受診した病院にてHbA1c13.1%、随時血糖261mg/dLを認めて糖尿病と診断され、すぐに当院を紹介受診されました。25歳時に健診で尿糖を指摘されましたが受診せず、46歳時に糖尿病と診断されても未治療のまま4年が経過しておりました。当院紹介時、すでにCre1.55mg/dL(eGFR 36.7)、尿蛋白7.0g/g・Creと糖尿病性腎症3期まで進行。治療を開始して、血糖コントロールが改善したのちも腎症はさらに進行し、透析導入に至りました。診察室では治療を受けても状況が改善しないことにいらだち、医療不信と思えるような言動もありました。透析開始後は、弁当屋も廃業すると決めたそうです。糖尿病発症早期から治療開始していれば合併症発症にいたらず現状の生活を維持できていたのではないかと思うと残念です。平成28年国民健康・栄養調査の結果、「糖尿病が強く疑われる者」のうち、40歳代の男性では48.5%が治療を受けていないとの報告でした。仕事で忙しいから、体調が良いからとの理由があります。糖尿病症例の予後改善には、このような症例を早期に継続的な糖尿病治療へ導くかが鍵であると思います。糖尿病の啓蒙とともに、就労と糖尿病治療が両立する支援体制の確立が喫緊の課題です。(答えは7ページにあります。)