ブックタイトル会報2019年9月

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概要

会報2019年9月

第195号 令和元年9月発行 Page 3臨床糖尿病支援ネットワーク6月7日から6月11日の5日間にわたり、カルフォルニア州サンフランシスコのモスコーンコンベンションセンターにおいて第79回米国糖尿病学会(ADA)が開催されました。臨床分野での目玉として、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が投与された大規模臨床研究の結果が発表され、注目を浴びました。まず、DPP-4阻害薬リナグリプチンを用いたCAROLINA試験では、グリメピリド1?4mgを上乗せする対象群と比較し、3ポイントMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)を主要評価項目とし、非劣性さらには優越性の検定が行われました。その追跡期間中央値は6.3年と糖尿病治療薬の心血管アウトカム試験としては最長でしたが、結果として3ポイントMACEは、リナグリプチン群で3,023例中356例(2.1/100人・年)、グリメピリド群で3,010例中362例(2.1/100人・年)に発生し、グリメピリドに対するリナグリプチンの非劣性が示されたものの優越性は認められませんでした(図)。全死亡、心血管死、非心血管死のリスクに関しても両群で差はありませんでしたが、全低血糖の発現率はグリメピリド群の37.7%(11.1/100人・年)に対し、リナグリプチン群では10.6%(2.3/100人・年)と有意に低い結果でした(HR 0.23、95%CI 0.21~0.26、P<0.0001)。これまでのDPP-4阻害薬同様、リナグリプチン群においてグリメピリド群に対する心血管安全性の優越性は示されずSGLT2阻害薬との違いが明確になる一方、体重増加や低血糖のリスクが低かったことから、DPP-4阻害薬の安全性に関しては一定の評価が得られたと考えます。一方、Researching Cardiovascular Events with a Weekly Incretin in Diabetes(REWIND)試験も発表され、心血管疾患の既往歴がない患者が約7割を占める2型糖尿病患者群において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチド群ではプラセボ群に比べて主要心血管イベント(MACE:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)が有意に減少したことが示されました。以前に発表されたリラグルチドによるLEADER試験の結果等を合わせると、GLP-1受容体作動薬は少なくとも心血管疾患の2次予防患者においては強力なツールとして改めて評価される形となりました。さらに、慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンによる腎と心血管の両アウトカムの改善を示したCREDENCE試験が4月に明らかになり、そのサブグループ解析の結果が今回発表されました。この試験は腎アウトカムを主要評価項目としたSGLT2阻害薬の大規模臨床試験で世界初の報告であったことから、その結果に大きな注目が集まっていましたが、今回のサブ解析で心血管疾患(CVD)の既往の有無にかかわらずカナグリフロジンによる心血管イベントリスクの低下および腎アウトカムの改善が認められたことが報告され、幅広い患者層で腎保護作用が示唆されました。CREDENCEの結果を受け、ADAは『糖尿病ガイドライン2019年版』(Standards of Medical Care in Diabetes)の一部を改訂し、細小血管合併症とフットケアの項に「2型糖尿病と糖尿病性腎臓病を有する患者のうち、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2以上で、特に300mg/g超のアルブミン尿を呈する場合には、CKDの進展リスクや心血管イベントのリスクを抑制するためにSGLT2阻害薬の使用を考慮することを推奨する」との記述を加えました。このように大規模臨床研究結果に関して、海外においてガイドラインを書き換えるなどの素早い対応がとられています。対象患者さんや試験デザイン、結果を十分に理解したうえで、我々も目の前の患者さんの診療に活かしていくべきと改めて感じました。第79回米国糖尿病学会(ADA)令和元年6月7日(金)~11日(火)サンフランシスコ[当法人理事]杏林大学/近藤医院近藤 琢磨 [医師]答え 2,3 下記の解説をよく読みましょう。 (問題は1ページにあります。)解説1.× 血糖依存的にインスリン分泌を促すのは、DPP-4阻害薬である。2.○3.○4.× 毎食前に内服する必要があるのは、グリニド薬とα-グルコシダーゼ阻害薬である。5.× 最近週1回製剤が出て服薬アドヒアランスが向上しているのは、DPP-4阻害薬である。読んで単位を獲得しよう